限りなく透明な展望台、葛西臨海公園「クリスタルビュー」

限りなく透明な展望台、葛西臨海公園「クリスタルビュー」

葛西臨海公園で東京湾を見渡すことができる展望広場レストハウス「クリスタルビュー」は1995年7月に竣工。設計は相手と競うコンペを好まず、メディアへの露出も少ない作品第一主義の谷口吉生。

「都市景観100選」「日本の渚百選」に選定されている葛西臨海公園の南側に建つクリスタルビューは、葛西沖の埋め立ての歴史や生息する野鳥の展示スペースに休憩ホールもある展望施設。建物は幅75m/奥行き7m/高さ11mの直方体で、水平と垂直のみの幾何学的造形がシャープな印象を与える。コンクリートの箱にガラスが四方を覆う外観は、空に溶け込むほどの透明感で美しい佇まい。

円や曲線のない純粋なガラスキューブ

円や曲線のない純粋なガラスキューブ

ゲートの先に見える開放的な景色

ゲートの先に見える開放的な景色

葛西臨海水族園を楽しんだ後は、展望広場のクリスタルビューへ。公園中央の葛西臨海公園駅から真っ直ぐ伸びるメインロードの先に、ガラス張りの箱が視界に入る。メインロードは緩やかな上り坂で建物の奥は空しか見えず、その先にどんな景色があるのか期待させるアプローチが素晴らしい。そしてアプローチ先の開口を潜ると、葛西海浜公園越しに広がる穏やかな東京湾を一望できる。

建物は地下1階地上2階で構成され、西側の入り口から入ると見えるのはコンクリートの壁と階段のみ。エレベーターもあるが、公園敷地内の大観覧車や都内のビル群を眺めることができるため階段で上る。2階は建物の東西を結ぶ長い通路があり、トンネルのように暗くなる場所では葛西臨海公園の歴史映像が流れ、単調になりがちな空間は明と暗のコントラストが良いアクセントとなっている。

2階の展望スペースへ繋がる通路

2階の展望スペースへ繋がる通路

暗い通路が空間を引き締める展望スペース

暗い通路が空間を引き締める展望スペース

2階の東側がメインの展望スペースで東京湾はもちろん、葛西臨海水族園のガラスドームやディズニーランドも見える。この空間が端正で居心地も良く今回のお気に入り。日陰シェードと冷房が効いているため、景色を眺めながら夏日で火照った体を冷やす。スロープで1階に下ると公園に生息する野鳥に関する情報が展示されている。展示パネルもガラス製で、透明感への徹底した追求も感じられる。

地下1階は基壇がコンクリートの打ち放しで、内部は広い休憩ホールと防災情報広場がある。そのまま海側の展望広場に出ることができ、改めて建物を振り返ると展望施設なのにどこか張り詰めた緊張感が漂うのは、細部までこだわる谷口吉生が設計したためだと思わせる。公園と東京湾に透明な建物を挟むだけで景色がより魅力的になるこの場所は、次回夕焼けや夜景を見るために訪れたい。

東から眺めるクリスタルビューと大観覧車

東から眺めるクリスタルビューと大観覧車

葛西臨海公園展望広場レストハウス「クリスタルビュー」/Kasai Seaside Park Crystal View

住所
〒134-0086 東京都江戸川区臨海町6-2-1 < 地図を表示 >
Tel
03-5696-1331
設計
谷口吉生(日本)
公式サイト
葛西臨海公園
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