房総の里山から首都圏のオアシスを目指す「市原湖畔美術館」

房総の里山から首都圏のオアシスを目指す「市原湖畔美術館」

千葉県市原市にある県内最大の貯水面積を誇る高滝湖を臨む「市原湖畔美術館」は2013年8月に開館。設計はこの美術館で日本建築学会作品選集新人賞2015を受賞したカワグチテイ建築計画。

市原湖畔美術館は1995年11月に誕生した観光・文化施設「市原市水と彫刻の丘」を、川口有子と鄭仁愉の建築ユニット「カワグチテイ建築計画」がリニューアル。元々あったユニークで回遊性の高い骨格をそのままに、亜鉛めっき鉄板の壁で展示室やホール・ラウンジなどを作り出し、豊かな自然環境とアート作品や地域活動が一体となって体験できる施設へ生まれ変わった。所蔵作品は銅板画家・深沢幸雄を中心に、市原市ゆかりの芸術家の作品など約700点を収蔵している。

KOSUGE1-16「Heigh-Ho」

KOSUGE1-16「Heigh-Ho」

企画展「ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ」

企画展「ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ」

1990年4月に完成した高滝ダムによってできた高滝湖の畔に建つ市原湖畔美術館へ。受付でチケットを購入して進むとエントランスコートには土谷亨と車田智志乃のアートユニット、KOSUGE1-16が制作した肺胞を逆さまにしたようなオブジェ「Heigh-Ho」がお出迎え。常設展は日本を代表する版画家で市原市名誉市民の称号も持つ深沢幸雄の銅版画・ガラス絵・パステル画などを展示している。

企画展は絵本「オオカミがとぶひ」で第18回日本絵本賞大賞を受賞したミロコマチコの「いきものたちはわたしのかがみ」が開催中。独特の躍動感で生き物の姿を印象的に捉え、時には音楽家と共鳴してライブペインティングを行うなどエネルギッシュで破天荒な作品が特徴的。絵画や絵本原画に書籍の装画、そしてターニングポイントとなった2016年・2018年に参加した山形ビエンナーレで発表した山車型の立体絵本など魅力を余すところなく紹介。(会期は2022/7/16~9/25まで)

生き物の体内を表現した「からだうみ」

生き物の体内を表現した「からだうみ」

Acconci Studio「MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS」

Acconci Studio「MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS」

屋上にはパフォーマンスやビデオアートの先駆的存在として知られたヴィト・アコンチの作品「MUSEUM-STAIRS / ROOF OF NEEDLES & PINS」がある。約700本のチューブが林立し雑草をかき分けるように進みながら建築や景観を楽しめる。美術館前の芝生広場には下駄を鳴らしてテレビを賑わせていたゲージツ家のクマさんこと、篠原勝之のモニュメント「飛来」が力強く建っている。

最後は隣接したレストラン「PIZZERIA BOSSO」で、高滝湖を眺めながら房総の旬の食材を使ったピザを美味しく頂いて一休み。藤原式揚水機の展望塔は「ちば眺望100景」に選ばれていたが、現在は老朽化のため上ることができず残念…。市原湖畔美術館は「瀬戸内国際芸術祭」等の総合ディレクターを担当している北川フラムが館長を務めているので今後のさらなる発展も期待したい。

レストラン「PIZZERIA BOSSO」と展望塔

レストラン「PIZZERIA BOSSO」と展望塔

市原湖畔美術館/Ichihara Lakeside Museum

住所
〒290-0554 千葉県市原市不入75-1 < 地図を表示 >
Tel
0436-98-1525
設計
カワグチテイ建築計画(日本)
公式サイト
市原湖畔美術館