東京都文京区の本郷通りに面する東京大学・赤門を入ってすぐ左手にある「情報学環・福武ホール」は2008年3月に開設。設計は同大学初となる特別栄誉教授の終身称号を持つ建築家 安藤忠雄。
東大で最新の独立大学、東京大学大学院情報学環は2000年4月に設立。社会との対話の拠点として建てられた情報学環・福武ホールは、東京大学創立130周年を記念してベネッセコーポレーション最高顧問の福武総一郎が個人寄付をした。施設はシンポジウムや国際遠隔授業を行う劇場型の福武ラーニングシアターを中心に、研究室やコモンズスペースなど学生たちによる知的活動が展開されている。
庇を支えるコンクリートの列柱
「考える壁」のスリットからの視点
都内にある安藤忠雄の建築で一番見に行きたかった情報学環・福武ホール。長さ約100mのコンクリート壁「考える壁」が特徴的で、仕切りではなく建物と既存の大学敷地をつなぐ“間”を表現している。イベントで投影などもされるこの壁と屋根庇が平行に走る外観はシャープで緊張感を与える。考える壁には20mのスリットが2ヶ所あるが、施工技術の高さに感心するほど綺麗な仕上がり。
奥行きが15mしかない細長い建物は、京都の国宝建造物でお堂が約120mもある「三十三間堂」をモチーフに設計。本郷通り側の楠を遮らないように地下2階から地上2階の半分以上が地下に造られているなど長い年月で培われた景観に配慮している。コンクリート壁の内側は地下2階まで吹き抜けのオープンスペースで、この空間は表参道ヒルズや東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTを思い出す。
安藤忠雄らしいコンクリート壁とガラスに囲まれた空間