妹島和世設計の環境・生活に溶け込む「鬼石多目的ホール」

妹島和世設計の環境・生活に溶け込む「鬼石多目的ホール」

群馬県藤岡市の旧鬼石中学校跡地に建てられた「鬼石多目的ホール」は2005年3月に竣工。設計はガラスを用いた作風で知られ、西沢立衛とのユニット「SANAA」でも活躍している妹島和世。

鬼石多目的ホールは2006年1月に藤岡市へ編入した旧鬼石町の中心地に位置し、管理棟・多目的ホール・体育館の施設が独立した3棟で構成されている。緩やかな傾斜の芝生と不定形にカーブしたガラス張りの建物が広場のような空間をつくり出し、建物内にいても常に外を感じることができる。人工的でモダンな建物だが、周囲の環境に溶け込み居心地の良い住民の交流の場となっている。

南側の芝生広場から見る外観

南側の芝生広場から見る外観

建物内から見渡す景色

建物内から見渡す景色

妹島和世の建築が藤岡市にあることは知っていたが、中々訪れる機会がなかったためGWに鬼石多目的ホールへ。敷地内の駐車場に車を駐めて管理棟で住所と職業を記入し、管理人から建物・見学について説明を受ける。まずは外観を一周してみると何処からでもガラス越しに反対側の景色が見え、棟と棟の間の道で立ち止まるとガラスに挟まれた自分が外にいるの分からなくなる錯覚が面白い。

建物内の床も外と同じコンクリートのため、地面が繋がり屋内にいることを一瞬忘れてしまう。屋根はベニヤ仕上げで床とは対象的に建物の軽さを際立たせる。多目的ホールは半地下になっていて、外壁のガラスから日差しが降り注ぎとても明るい。ホールは可動式客席が171席あり見学時は収納されていたが、充分なスペースでダンスや卓球、サークル活動の発表など様々な用途に活用できる。

ステージもある多目的ホール

ステージもある多目的ホール

半地下とは思えない開放的な体育館

半地下とは思えない開放的な体育館

体育館も多目的ホール同様に半地下で、外壁のガラスが高い位置の窓となり視線が抜け開放的。外側から体育館を覗けるためそのまま1階が観客席になる効果もある。屋根の梁もホールと同じく地元 鬼石杉の集成材が使用され細いスチールの柱が支えている。天井高と矩形が必要な体育館とホールを半地下としたことで、建物の高さをフラットにして地上は自由な輪郭を描ける構想が素晴らしい。

最後は管理棟にあるSANAAデザインのラビットチェアで一休み。ぽかぽか陽気にゆったりとした時間が流れ、缶コーヒーを片手に座っているだけでリラックス。景色をぼんやり眺めていると住民と思われる子どもや老夫婦がふらっと立ち寄り敷地内を散歩したり、日向ぼっこをしながら談笑している素敵な光景を目撃。生活の延長線上に妹島和世の建築があることをとても羨ましく思う。

SANAAデザインのラビットチェア

SANAAデザインのラビットチェア

鬼石多目的ホール/Onishi Multipurpose Hall

住所
〒370-1492 群馬県藤岡市鬼石158 < 地図を表示 >
Tel
0274-20-3011
デザイン
妹島和世(日本)
公式サイト
鬼石多目的ホール(藤岡市公式サイト)