長野県の風景を好んで描いた日本画家・東山魁夷の作品を多数収蔵する「東山魁夷館」は1990年4月に開館。絵を守り、目立ち過ぎない額縁になるような建築を設計したのは谷口吉生。
東山魁夷館は四季折々に変化する自然の魅力を描いた東山魁夷の個人ギャラリー。東山魁夷は横浜生まれの神戸育ちだが、創作のインスピレーションを与え作品を育ててくれた故郷と呼ぶ長野県に本人の申し出で作品を寄贈した。収蔵作品はAQUOSのCMに採用された「緑響く」や遺作となった「夕星」など、本作品36点以外にもスケッチや下絵など約1000点近くにのぼる。そして年6回全ての作品を入れ替え展覧会を行い、完成作品だけでは伝わらない一味違った鑑賞体験ができる。
メイン展示室へ暖かみのある階段が誘う
ホテルのようなラウンジ
長野県立美術館に併設し、2019年10月に設備系のメンテナンスでリニューアルした東山魁夷館へ。外観は雁行配置の建物に軽快感を出すアルミ材を用いていて無駄なものが一切ない。中庭の水盤と直線的な構成はまさに谷口吉生の建築で惚れ惚れしてしまう美しさ。設計の経緯は東山魁夷が友人だった建築家の谷口吉郎に相談したところ、息子である谷口吉生が紹介され担当した。
エントランスを抜けて階段を上がり2階の展示室では「東山魁夷館コレクション展2023 第Ⅲ期」が開催中。初秋の志賀高原を学生時代に描いた「山谿秋色」や、紅葉で有名な京都の栂尾(とがのお)にある高山寺へ向かう道から描いた「照紅葉」など様々な秋の風景画を展示している。実在している風景なのに幻想的で不思議な静けさのある東山魁夷の作品は、人物が描かれていなことからも雄大で美しい自然に対して感謝と畏敬の念を感じずにはいられない。(会期は2023/8/24~10/31まで)
信州の景色をラウンジから中庭越しに望む