上野の東京国立博物館敷地内にある「法隆寺宝物館」は1999年7月に開館。設計は豊田市美術館や土門拳記念館、ニューヨーク近代美術館などが代表作で、美術館の名手とも言われる谷口吉生。
法隆寺宝物館は1878年(明治11年)に奈良の法隆寺から皇室に献納され、さらに戦後国に移管した300点ほどの宝物を展示。宝物は飛鳥時代から奈良時代にかけての工芸品や仏像を中心に、一度も土に埋もれることなく今日に伝わるコレクションとして、奈良の正倉院宝物と並び高い評価を得ている。美しく気品がある建物は、2001年に国内最高峰の「日本建築学会賞 作品賞」を受賞している。
ガラス張りのエントランスは明るく開放的
国宝「灌頂幡」を復元
東京国立博物館の入口から左手に進むと樹木に遮られ僅かに見える法隆寺宝物館。視界が開けると谷口吉生らしい端正な建物と美しい水盤は襟を正したくなるほどの品格ある佇まい。エントランスへ入ると格子状のガラスカーテンウォールとライムストーンという大理石に挟まれた空間は和の趣が感じられる。さらりとあるマリオ・ベリーニのアームチェアも赤茶色が良いアクセントになっている。
1階展示室は法隆寺献納宝物を代表する国宝の灌頂幡(かんじょうばん)という、お堂や境内に掲げられる旗が展示されている。透彫で如来や天人・唐草文などを表した金銅板で構成され、2階に繋がる階段の吹き抜けには模造品もある。メインフロアには観音菩薩像がガラスケースに1体ずつ収められ、整然と並ぶ姿は圧巻。照明を限りなく落とし、厳かで張り詰めた空間は畏怖の念を抱かせる。
厳かな雰囲気に並ぶ観音菩薩像