北品川の閑静な住宅街で、様々なジャンルの現代アートを積極的に展示する「原美術館」は1979年12月に開館。設計は東京国立博物館や銀座和光(旧服部時計店)などを手掛けた渡辺仁。
原美術館は元々、東京ガス会長や日本航空会長などを歴任した実業家・原邦造の私邸として1938年に建造された。戦後にはGHQにより取り壊されそうになるが、頑丈なレンガ造りだったこともあり奇跡的に回避。その後改築により絵画・彫刻・インスタレーションなど、様々な現代アートを紹介する美術館となった。その他には講演会や音楽・パフォーマンスなどの各種イベントも実施。中庭の「カフェ ダール」は都会にいることを忘れてしまうほどゆったりした空間で、お茶や軽食が楽しめる。
昭和レトロな外観がとても良い
庭には多田美波、関根伸夫などの作品を設置
カフェが素敵な美術館と雑誌で紹介されていたことを思い出し、3連休の最終日に原美術館へ。20世紀初頭のヨーロッパ建築様式(アールデコ)を取り入れたモダンな建物は雰囲気がとても良い。アールデコとは幾何学的図形(三角形や方形)など、単純で直線的な装飾美術を指す。外壁の白いモザイクタイルに歴史を感じる手すりや床など、昭和の建築としても貴重でそれ見たさに訪れる人が多い。
企画展は「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」が開催。安藤正子は愛知県出身の作家で、奈良美智や杉戸洋なども師事した櫃田伸也(ひつだ のぶや)の元で絵画を学び、独特の画力が高く評価されている。作品は鉛筆画9点と油彩画10点の計19点が展示。特に油彩画は丹念に時間をかけて制作しているため、どれも精緻な描写に思わず見入ってしまう。(会期は2012/7/12~8/19まで)
年季が入った階段を一歩一歩踏みしめる