尾形光琳の国宝「紅白梅図屏風」を筆頭に東洋美術を収蔵・展示している熱海「MOA美術館」は2017年2月にリニューアル。設計は現代美術作家 杉本博司と建築家 榊田倫之が主宰する新素材研究所。
熱海市の高台に位置するMOA美術館は、創立者 岡田茂吉の生誕100年を記念して1982年1月に開館。日本・中国を中心に絵画・書籍・彫刻などの名品が並び、国宝3点・重要文化財66点を含む約3,500点が収蔵されている。リニューアルは展示スペースやカフェなど館内が刷新され、屋久杉や畳・黒漆喰といった日本の伝統的な素材を用いて作品の美しさを最大限に引き立てる展示空間を創出。定期的な演能会を鑑賞できる能楽堂や、植栽が美しい日本庭園「茶の庭」など施設も充実している。
SFの世界へ引き込まれるようなエスカレーター
相模灘を望むことができる広場「ムア スクエア」
今年2月のリニューアルが話題となったMOA美術館。山麓側エントランスから続く7基のエスカレーターは、グラデーションの照明が壁面や天井を彩り、刻々と変化しながら幻想的な空間を演出。このエスカレーターは美術館との高低差約60mを繋ぎ、長さは200mにおよぶ。途中にある直径約20mの巨大なドーム型円形ホールは、依田満・百合子夫妻による日本最大の万華鏡を映写している。
エスカレーターが終わるとヘンリー・ムアの作品「王と王妃」を設置した広場「ムア スクエア」へ。天気が良ければ相模灘だけではなく遠くの初島・大島を見渡すことができる。広場の大階段を上ると、ようやくメインロビーに到着。館内は視覚要素を極力無くしてすっきりとした空間が広がる。先ずは豊臣秀吉が正親町天皇に茶を献じるために作らせた「黄金の茶室」から。襖や茶器など贅沢に金が使用され当時の茶室を見事に復元し、赤色の障子と共に桃山時代の華やかな文化を象徴している。
豊臣秀吉が天下統一後に作った「黄金の茶室」