島の豊かな自然と空き家・空き地を活用し、アートと建築が住民の生活と一体となって展開する犬島「家プロジェクト」は2010年7月に開始。ディレクションは長谷川祐子と妹島和世。
犬島「家プロジェクト」は直島の家プロジェクト同様に過疎化が進む集落の廃屋などを利用し、アートが日常生活と限りなく近距離に存在することで訪れた方と住民が対話できるような場所を目指している。犬島精錬所美術館に続き柳幸典の作品展示を目的とした3つのギャラリー「F邸」「S邸」「I邸」に、屋外の「中の谷東屋」を公開。長谷川祐子はアーティスティックディレクター、妹島和世は建物全ての設計を担当。将来的に7つのギャラリーまで発展することを構想に掲げている。

「F邸」作品:柳幸典 山の神と電飾ヒノマルと両翼の鏡の坪庭

「S邸」作品:柳幸典 蜘蛛の網の庭
最初に訪れたのは精錬所へ向かう途中で右手に進んだ場所にある「F邸/山の神と電飾ヒノマルと両翼の鏡の坪庭」。石の神様を祀る神社に隣接しているガラス張りの日本家屋で、元々あった古民家の梁や柱などを再利用している。両端には耐震壁として機能し、曲折したアルミパネルで仕切られた中庭もある。建物内の水面上にネオン管で日の丸を形成し、海から太陽が昇るようなイメージの作品。
次はカーブした道沿いに透明なアクリルが美しい弧を描く「S邸/蜘蛛の網の庭」。1ドル札の図柄が精巧に編み込まれた蜘蛛の巣状のレースに、13本の矢が所々に刺さっている。2008年のリーマンショックなどの金融資本主義が崩壊していく様子を表し、透過と反射が不思議な風景を展開する。アクリル越しに見るオリーブの木も作品の一部で、ドル札と豊かな犬島の自然を対比している。

透明なアクリルの曲線が連なる