神奈川県小田原市の相模湾を望む丘にある「江之浦測候所」は2017年10月に開館。大谷石をふんだんに使用した設計は、旧素材で建築の特殊性を表現することに長けた新素材研究所。
小田原文化財団 江之浦測候所は天空を測候することで原点に立ち戻り、生きる意味や目的を再確認する場所として写真家・現代美術作家の杉本博司が設立。建築家の榊田倫之とのユニット、新素材研究所の設計でギャラリー棟・石舞台・光学硝子舞台・茶室・庭園・門・待合棟などの施設で構成されている。敷地内でも一際目を見張るのは夏至光遥拝100メートルギャラリーと光学硝子舞台。
杉本博司の代表作「海景」シリーズを展示
ギャラリー先端と美しい景観
杉本博司が構想10年・工事10年の歳月をかけ、将来の遺跡になることまでを想定した江之浦測候所へ。ヒルトン小田原からは車で10分もかからない距離で、駐車場から完成したばかりの参道を抜けると根津美術館から寄贈され再建した明月門前の入口に到着。見学は事前予約制で午前(10:00~13:00)と午後(13:30~16:30)の入れ替え制を導入。最初は4面ガラスで覆われた待合棟から入ると、中央に置かれた大テーブルは樹齢1000年を超える屋久杉の一枚板で迫力がある。
待合棟の前に立つのは、海抜100メートル地点に長さが100メートルに及ぶ夏至光遥拝100メートルギャラリー。杉本博司の作品が並ぶ構造壁には日本の代表的な軟石・大谷石が積まれ、対面のガラスは柱の支え無しに37枚が自立していて建築的にもかなり挑戦的。夏至の朝に太陽の光がまっすぐに射し込む方角に造られていて、先端の展望スペースからは相模湾が広がる絶景を望める。
冬至光遥拝隧道内の「光井戸」