香川県と岡山県の中間辺りに位置し、湧き水に恵まれ稲作・農業が盛んな豊島。直島に並ぶ人気のアートは、自然を活かしたシンプルな作品から最新技術の奇抜なものまで島内に点在している。
豊島は周囲18km、人口約800人が住む直島諸島に属する島。自然豊かでオリーブやいちご、そうめんなどが代表的な産品。平安末期からおよそ1,000年に渡り柔らかくて加工しやすい「豊島石」が採れ、桂離宮の灯篭に使用されるほどの高品質で石の島としても知られている。2010年7月の瀬戸内国際芸術祭からは、ベネッセアートサイト直島の舞台の一つとして多くの観光客が訪れている。
青木野枝「空の粒子」
海に飛び込むかのような景色
旅行3日目は豊島へ。高松港からは高速旅客船の直行便があり約35分で到着。予約をしていたレンタルサイクルで目指すは豊島美術館。島の北部を東へ進むが上り坂がしばらく続き、電動自転車の快適さを体感する。島を見下ろせる唐櫃(からと)にあるのが青木野枝の作品「空の粒子」。粒子が舞うかのように円形の彫刻をつなぎ合わせ、空を見上げるきっかけを与えてくれる。ここから先は下り坂となり、緑が美しい棚田や瀬戸内海の絶景を楽しみながら進むと豊島美術館へ到着。
少し遠回りとなる美術館へのアプローチは景色を眺めながらゆっくりと進み、入り口で順番を待つ。月曜日は直島の施設が殆ど休みということも影響しているのか少し混雑している。順番となり西沢立衛が設計した低く白いドームのような建物内に、内藤礼の作品「母型」だけがある。作品は壁やオブジェがあるのではなく足元から少しずつ湧き出る水滴のみで、やがて泉となり緩やかな傾斜を流れて穴へ消えていく。皆座ったり寝転んだりと、思い思いの格好で観ているのがとても面白い。
海景を楽しむ美術館へのアプローチ