直島の「李禹煥美術館」は瀬戸内国際芸術祭のプレオープンとして2010年6月に開館。谷あいから海へと繋がる地形を活かした設計は、同島のベネッセハウス・地中美術館も手掛けた安藤忠雄。
ベネッセハウス ミュージアムから歩いて数分、瀬戸内海を臨む谷あいにひっそりと佇む李禹煥美術館。李禹煥(リ・ウファン)は韓国生まれでドイツやイタリア、アメリカなど欧米中心に活動し、国際的な評価を得ている現代美術家。美術館は直島福武美術館財団が運営する李禹煥初の個人美術館で、1970年以降の彫刻や絵画が展示されモノに溢れる社会の原点を見つめ直す。施設は展示室以外にストアのみと小規模だが、作品と建築が共鳴したスケールの大きさを感じることができる。
美術館へはコンクリート壁が視界を遮る階段を下りていく
鉄板・自然石の作品「関係項-対話」
李禹煥美術館はあえて海への眺望を遮るようなコンクリート壁を左側に感じながら階段を下りると、視界が開け芝生広場にある2枚の鉄板と自然石の作品「関係項-対話」が出迎えてくれる。その先へ進むと玉石が敷き詰められた正方形の前庭に辿り着き、横幅約50mほどのコンクリート壁に対して垂直に伸びる細長い石柱が存在感を示している。美術館は地中美術館同様に地下へ埋設された構造となっているため、この場所からは全容が殆ど分からず通路を見つけるのも少し迷うほど。
水平を強調したコンクリート壁の裏側が美術館入口への長いアプローチで、途中には暖色の作品「関係項-しるし」がある。美しく仕上げられたコンクリートに挟まれ青空を見上げながら進むと、洞窟のように暗い入口を視界に捉え緊張が高まる。吸い込まれるような感覚になりながら中へ入り、チケットセンターでチケットを購入後、中庭にある作品「照応の広場」を観てからいよいよ館内へ。
コンクリート柱・自然石・鉄板の作品「関係項-点線面」