神秘的な三角形に魅了される「21世紀キリスト教会」

神秘的な三角形に魅了される「21世紀キリスト教会」

大使館が点在し、国際色豊かな広尾の住宅街にひっそりと佇む「21世紀キリスト教会」(広尾の教会)は2014年8月に竣工。設計は「光の教会」など国内の教会建築で6作目となる安藤忠雄。

21世紀キリスト教会は聖書信仰に基づき正統的なプロテスタント教会で、誰でも参加できる日曜・水曜礼拝やセミナーなどが行われ、結婚式を挙げることもできる。建物は安藤建築の代名詞、コンクリートの打ち放しで上から見ると二等辺三角形の設計になっている。三角形は求心的な空間を生み出し、人々が寄り添い調和のイメージを象徴するため教会に相応しい形として採用された。

エントランスの開口部とロゴ

エントランスの開口部とロゴ

礼拝堂2階席からの祭壇

礼拝堂2階席からの祭壇

建物内の見学は日曜礼拝の参加が条件のためWebから事前予約を申し込む。場所は広尾駅から5分程の距離にあり、土地は吉田茂元首相が所有していた。建物はRC造地下1階から地上2階建てで二等辺三角形の頂点が東の方角を向く。施設は1階が礼拝堂とオフィスやライブラリー、2階は礼拝席のみで、地下は床面積を必要とするカフェや祈りの部屋、セミナー・キッズルームで構成されている。

安藤忠雄が設計した教会は「風の教会」「水の教会」「光の教会」「垂水の教会」「海の教会」の5作品があり、「広尾の教会」では礼拝堂の床・壁・ベンチの内装が木で統一され柔らかい空間が特徴的。二等辺三角形の先端に祭壇が配置され、背面から自然光に照らされた十字架はとても神秘的。十字架の下はガラス張りになっていて、覗き込むと洗礼式が行われる石張りの洗礼槽が見える。

宙に浮いているように見える祭壇の十字架

宙に浮いているように見える祭壇の十字架

左右に肘掛けがある特注の長椅子

左右に肘掛けがある特注の長椅子

参加した礼拝は思いのほか賑やかで賛美歌を歌い、牧師のメッセージに耳を傾けるなど貴重な体験となった。私設教会のため建築主でもある増山牧師のメッセージを聞いている時、意識が三角形の先端に自然と定まり集中しやすい空間であることを実感する。三角形の安藤建築は21_21 DESIGN SIGHTを思い出すが、コンクリートは矩形のイメージが強く教会で採用したのは初となる。

地下は地上階より面積が広く、カフェやセミナーも開けるキッズルームはドライエリアの光が差し込みとても明るい。建物全体に開口部が多いため地下でも常に光を感じることができる。教会の規模としては決して大きくない21世紀キリスト教会だが機能性・温もり・聖さを兼ね備えている。そして三角形の秘められた力が宿り、光や空間・細部までこだわりを持った現代的で美しい教会。

スリットから漏れる優しい光

スリットから漏れる優しい光

21世紀キリスト教会/21st Century Christ Church

住所
〒150-0012 東京都渋谷区広尾5-9-7 < 地図を表示 >
Tel
03-6277-1257
設計
安藤忠雄(日本)
公式サイト
21世紀キリスト教会