直島「家プロジェクト」は1998年3月に開始。役場や郵便局などが集まる直島の中心地、本村地区の点在する空き家などを復元・改修し、空間そのものを作品化(インスタレーション)している。
地域再生の一環としてアート事業は数多く存在するが、直島「家プロジェクト」の取組は一つの理想形と言われている。瀬戸内海に浮かぶ島という特別な立地に住民がアートと一緒に生活することで作品に時間と記憶が織り込まれ、さらに発展していく調和が卓越している。作家と住民が地域性や制作プロセスを共有しているため、作品に親近感が湧くのもこのプロジェクトならでは。
「南寺」作品:ジェームズ・タレル/設計:安藤忠雄
「護王神社」作品・設計:杉本博司
家プロジェクトは「角屋」を皮切りに「南寺」「護王神社」「石橋」「きんざ」「碁会所」「はいしゃ」の7軒が公開。「角屋」は200年前の建物が修復され、宮島達男のデジタルアート「Sea of Time ’98」を展示。土間に瀬戸内海を見立てた水面が広がり、125個のLEDカウンターが点滅。カウンターの点滅速度はランダムで、4~90歳の住民125人が設定し個人の所有する時間を表現している。
「南寺」はジェームズ・タレル「Backside of the Moon」の作品に合わせたサイズで、直島のプロジェクトに深く関わっている安藤忠雄が設計。中はスタッフに誘導されなければ歩くこともできない真っ暗な闇。手探りで進み椅子に腰を掛け、しばらく正面を見ていると光が浮かんでくる。この光は初めからあったもので、暗順応の視覚を上手く利用した光マジックに誰もが感動してしまう。
「石橋」作品・空間デザイン:千住博