18か国からなるアラブ諸国の文化を発信するパリの「アラブ世界研究所」は、ノートルダム寺院があるサン・ルイ島の対岸に位置する。設計はジャン・ヌーヴェル+アーキテクチュア・スタジオ。
1987年12月に開館したアラブ世界研究所は、地中海を挟みアラビア半島周辺のユーラシア大陸からアフリカ大陸にかけて一帯となるアラブ諸国の様々な文化を紹介。イスラム教の聖典「コーラン」やタペストリー、ネックレスなどの宝飾品に陶器などが7階から4階へ下りる順序で展示されている。ジャン・ヌーヴェルが設計した建築としても有名で、幾何学模様のアルミパネルを用いた全面ガラス張りは、マシュラビーヤというアラブ建築の窓飾りをモチーフにしたと言われている。
ガラスに映り込む空が建物を透明に
ガラス張りの外観が建物の表情を刻々と変える
歴史ある街並みのパリで現代建築として評価が高く、ジャン・ヌーヴェル設計の建物を見るためにセーヌ川沿いのサン・ベルナール通りをサン・ルイ島方面へ歩いていくと、シュリー橋のたもとにガラス張りの曲線が視界に入る。西側へナイフの先端のように鋭いエッジを見せる外観に、エントランスらしきものが見当たらず南側へ回る。そこで現れた外壁こそがアラブ世界研究所本来の姿だった。
北側の曲線に対して広場に面した南側は直線的で幾何学模様のアルミパネルが連なり、今までに見たことのない圧巻の存在感。凹凸のないガラス面にアラブへの敬意と美しさを注ぎ込むことで、世界的価値のある美術館を設計したジャン・ヌーヴェルには感服させられる。さらにガラスが空を映し込み建物が景色の一部となる透明感と、アラブ的な模様の外観が存在を主張するギャップが面白い。
館内は光が差し込み外観とは全く違う表情を見せる