アラブ諸国文化を発信するパリの「アラブ世界研究所」は1987年12月に開館。設計はこの作品で一躍脚光を浴び、ガラス建築を得意とするジャン・ヌーヴェルとアーキテクチャ・スタジオ。
パリ5区のセーヌ川沿いで一際存在感のあるアラブ世界研究所は、フランスとアラブ世界の文化交流を促進し、美術館や図書館・劇場・レストラン・ミュージアムショップなど多様な施設を揃える。美術館は宝飾品や色鮮やかな陶器・現代アートなどアラブの代表的な作品が展示され、企画展も数多く開催。建築としても非常に魅力的で1980年代にパリで行われたルーヴル美術館大改修やオペラ・バスティーユ建設など、大規模施設建築のプロジェクト「グラン・プロジェ」の中でも評価が高い。
建物への期待が高まるアプローチ
日差しの強さで自動調光するアルミパネル
2008年に訪れたアラブ世界研究所をもう一度見るために再びパリへ。アラブ世界研究所は全面ガラス張りの南側外観が最大の特徴で、イスラム装飾を連想させる幾何学模様のアルミパネルが240枚で構成されている。このパネルにはカメラの絞りのようなメカニズムが搭載され、日差しの強さで開閉し外光を自動調整する優れもの。時間によりガラスに映る空や景観が、建物の表情を変化させる。
設計したジャン・ヌーヴェルはこの建築で、イスラム文化を体現し優れた建築に贈られるアガ・カーン賞を1989年に受賞。さらに2001年には高松宮殿下記念世界文化賞を、2008年は建築界のノーベル賞ともいえるプリツカー賞も受賞。カルティエ現代美術財団やバルセロナのトーレ・アグバールなど、独特なガラスの使い方で光を操る建築が得意で「ガラス(光)の魔術師」とも言われている。
外観とは異なり神秘的な雰囲気の館内